2026年2月14日に第15回WOMANウェルネスライフ研究会 7周年記念講演「更年期の健康支援を考える」を開催しました。
今回もMika Masakiさんにレポートしていただきました。
講座の詳細はこちらをご確認ください。
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更年期は「よい曲がり角」高尾美穂先生が語る、前向きに乗り越えるヒント
今回の研究会は、WOMANウェルネスライフ研究会第15回・7周年記念講演として開催されました。
節目となる本会には、産婦人科医の高尾美穂先生をお迎えし、第1部は「知っておきたい! 更年期の健康支援」をテーマにご講演いただきました。第2部は「教えて!高尾先生! 更年期の健康支援Q&A」という構成です。
NHK「あさイチ」などでもおなじみの高尾先生。日々の診療に加え、スポーツドクターや産業医としても活動し「医療の現場だけでは届きにくい人たち」に向けて発信を続けています。
第1部「知っておきたい! 更年期の健康支援」
●「性差」はなくせない。でも、理解はできる
講演は、ジェンダーと健康の話題からスタートしました。
ジェンダー平等の観点から、社会的性差は縮めていけるものとして捉えることができますが、男女の生物学的な性差については縮められない差であるため、男女間の健康課題の違いを理解することの重要性と、その違いについて説明していただきました。
まず、女性に多い症状として肩こりやうつ病(男性の約2倍)を挙げる一方で、日本の自殺者数は男性に多いことから「男性は強くあるべき」という無言のプレッシャーが背景にあるのではないかと指摘されました。他にも、骨粗鬆症は女性に多く、コレステロール異常は女性では閉経後に増加しますが、男性ではより早い年代から注意が必要であることを説明しました。
また健診について。健診は男女とも同じ検査項目で、女性にはその特性に合った健診項目を取り入れることを検討すべきではと語られました。健診の検査項目はまだ男性目線の部分が多いとも考えられます。
● エストロゲンという“40年の守り神”
女性と男性との違いは生殖機能の違いから。男性には精巣、女性には卵巣があり、月経は、女性は卵巣から分泌されるホルモン、エストロゲンにより排卵が起こり、生理は赤ちゃんが乗るかもしれなかったベッド(子宮内膜)を手放す現象であり、生理が来ることは卵巣が働いている証拠、来なくなることは卵巣の働きが落ちているサインであると言えます。 このエストロゲンが女性の体に与える影響はとても大きく、美容面(肌や髪)だけでなく、コレステロール値の維持、血管の弾力性保持、骨の強化、筋肉量維持、関節の滑らかさ、認知機能、自律神経を介したメンタル面にも作用することを説明しました。エストロゲンは、初潮を迎える10歳頃から閉経時期となる50歳頃までの約40年間、知らないうちに、体を守ってくれているとも考えられます。
● 更年期はいつから?実は「後からしかわからない」
ところで、そもそも更年期とはいつを指すのでしょうか。
日本では閉経をはさむ前後5年の計10年を更年期と定義し、平均的な閉経年齢は50歳(中央値50.5歳)であるため、平均的な更年期は45〜55歳、ただし閉経は最後の生理から12か月間生理が来なかった時点を後付けで確認されるため、更年期の始まりも後付けでしかわからない。国際的には、60日間以上生理が来なかったらそこから約1〜3年で閉経を迎えるという、指標があるそうです。他にも、生理周期の変化として、まず短くなり、その後、生理周期が延び時期を経て、60日間生理が来ない状態から1-3年で閉経に至るという具体的な内容も説明していただきました。
● 「休みたい」は、もうサインかもしれない
では、更年期症状、更年期障害とは何か。更年期症状は、この時期に調子が悪いという経験をすることを指し、更年期障害は、はっきりとした原因がないにも関わらず、その不調のために生活に支障が出ている状態を指すことと説明しました。 生活に支障が出るということについて、「休むという行動」だけでなく、「休みたいと思った時点」で既に生活に支障が出ているという考え方を示し、更年期障害は、本人が困っていると自覚できない限り解決方法にアクセスできない定義になっていることを高尾先生は指摘し、更年期障害の人の半数は、医療機関に受診していないというデータもご紹介いただきました。実際、症状が生活に支障があっても、がまんして過ごしている人は決して少なくないでしょう。
● ホットフラッシュはなぜ起きる? それは本当に更年期症状?
更年期の症状として、多くの人に認識されているのが「のぼせる、顔が赤くなる、急に汗が出る」というホットフラッシュの症状。日本人女性の40-70%がホットフラッシュを経験するそうです。ホットフラッシュの原因について、生理が順調な時期は脳の視床下部と卵巣の間でエストロゲンの分泌調整が適切に行われていますが、更年期には卵巣がエストロゲンを作れなくなっても視床下部は気づかずに指令を出し続けることで、視床下部の働きがうまくいかなくなることでおこると説明されました。
ホットフラッシュ以外にも、更年期症状として動悸、イライラ、気力低下、泌尿生殖器症状(外性器の乾燥、尿漏れ)、加齢性変化(肩こり、腰痛、関節痛)などもあり、これらを複数同時に経験することが多く、そのためにキャリアをあきらめる女性が少なくない現状があります。経済産業省のデータでは、生理にまつわる悩みや更年期に伴う不調が日本社会において大きな経済損失を生み出していることが示されています。
ただ、更年期症状と似たサインを出す他の病気として、甲状腺機能異常、貧血などの可能性もあります。貧血を指摘されても「特に困っていない」と答える女性が少なくなく「あなたは困っていないかもしれないが、体は困っているかもしれない」という視点の重要性を強調しました。うつ病、甲状腺機能異常、貧血、更年期のメンタル不調の判断は非常に難しいことから、自己判断せず、そしてがまんせずに、医療機関に受診するのがおすすめです。
● 治療は「揺らぎをなだらかにする」こと
こうした更年期の不調の医学的な解決策として、ホルモン補充療法があります。更年期のエストロゲン減少は急激ではなく、アップダウンを繰り返しながら平均値が落ちていく変化であり、ホルモン補充療法は、エストロゲンを3分の1ほど足すことで揺らぎを和らげ、ソフトランディングさせるものであると説明されました。ホルモン補充療法のリスクとして、各国での研究により5年の継続した治療では乳がんのリスクに関係なく、5年以上でもアルコール摂取習慣と同程度かそれ以下のリスクであることが明らかになっています。
ホルモン補充療法以外の選択肢として漢方薬、エクオールについてもお話がありました。大豆を摂取した際に腸内で代謝されて作られるエクオールの化学構造式がエストロゲンに似ており、似た作用があることを説明しました。ただ、日本人女性の2人に1人は作れないことを指摘し、作れる人は1日に豆腐3分の2丁、納豆1パック、豆乳コップ1杯を摂取することを推奨。作れない人はエクオールサプリメントを利用できることをお話しいただきました。
漢方薬については、加味逍遙散(かみしょうようさん)が不眠、イライラ、冷え、肩こりなど血の巡りが良くない状態に効果的であること、抑肝散(よくかんさん)は怒りっぽさやイライラが強い場合に適していること。継続使用の場合は肝機能や腎機能のチェックが必要であることも言及しました。
また、更年期症状を重くする要因として、性格が真面目な人ほど、症状が重くなる傾向があるそうです。約束を守り、時間を守り、しっかり働くという、現代の働く女性とも言えます。また、周りとの関係性も重要で「しんどい」と言える関係性や、頼れる関係性があるかどうかが影響します。日本人女性の更年期障害はカウンセリングで9割改善するというデータがあり、これは日本人女性が更年期の話題を周囲に話しにくいからではないかと語られました。
他にも、更年期の健康づくりを生活習慣の視点からアドバイスいただきました。
○栄養・体重管理
年代が上がると活動量が減るため、更年期は太りやすいので、食べる量も気をつけていく必要があり、病気のリスクが最も低いBMI22前後(22×身長(m)×身長(m))に体重管理をする。
○運動
更年期の不調で最も多い肩こりは、肩関節を回す。腰痛は、背中を丸める動き、反る動き、ツイスト(後ろを振り返る)動きを日常生活に取り入れる。
有酸素運動により、ホットフラッシュなどが改善する。更年期女性の5人に4人は運動習慣がないため、運動の良さ・効果を共有することが重要。
○睡眠
日本の女性の睡眠時間は非常に短く、7時間の睡眠確保を推奨。睡眠の質を高める方法として、夕方以降はオレンジ色の明かりを使用し、携帯使用時はバックを黒くする、体温が高い状態から低い状態になる際に眠気を催すメカニズムを利用すること、朝食時のタンパク質を摂取(約16時間後にメラトニンに変化)する。
● 何かのために働くことをあきらめない、働くために何かをあきらめない
更年期はちょうど管理職となる時期でもありますが、この時期、男性と比べて女性の方が病気を経験することが多いという事実があります。これは女性のキャリアにしかない落とし穴と言えるそうです。また、働く女性にアンケートをとると、女性特有の健康課題によって、職場で困った経験をしたことがある、上司に伝えにくいという回答が寄せられています。健康経営という言葉も浸透してきて、職場における周囲の理解の重要性は認識されつつありますが、実際のところ周りは何をしたらいいかわからないという声もあり、まだまだここに溝があります。
日本の人口減少により労働力が不足する中、女性の就労継続が社会的に求められており、現在は7~8割の女性が働き続ける時代です。妊娠・出産までは、女性にしか担えないものですが、その後の子育てや家事、介護は必ずしも女性だけの役割ではない。家事・育児・介護や病気と仕事を両立し「何かのために働くことをあきらめない」「働くために何かをあきらめない」社会の実現が課題であると高尾先生は述べられました。
● 更年期を前向きな転機にするために
そして、更年期を体への理解を深め生活習慣を見直す機会にしてほしいと。本人の努力だけでなく、ジェンダー役割の固定観念を手放し、役割を周囲に委ねることで運動・睡眠・休息の時間、自分のための時間を持つことが前向きな“自分”を作ることにつながるのでは。
困りごとに気づいたら行動し、周囲も知ろうとすることで相互の理解が進んでいきます。知ることで想像することができ、機嫌が悪そうな人が、実は体調不良かもしれないと思えば、かける言葉も変わってきます。 更年期を「よい曲がり角」としてマイナスをゼロにするだけでなくプラスにしていきたいという願いを語られました。
第2部「教えて!高尾先生! 更年期の健康支援Q&A」
第2部は(株)ウェルネスライフサポート研究所代表の加倉井さおりがファシリテーターとなり、参加者からの事前の質問に対して、高尾先生にお答えいただきました。
「具体的なご回答が大変役に立ちました。」
「専門職として日々学び続ける必要性も深く感じました。」
「今日からまた前を向いて健康サポートをしていけそうです」
など嬉しいお声がたくさん寄せられています。
今回の学びを振り返って
受講者の多くが、企業などで働く女性の健康支援をする保健師、看護師の方々でした。今回の高尾先生の学びを現場で実践し、誰もが健やかに働ける社会の実現を推進していくことを期待しています。
(レポート:Mika Masaki)
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