7月27日に第12回WOMANウェルネスライフ研究会 「第2弾!みんなで考える!セクシュアル・リプロダクティブヘルス&ライツ ~誰もが健やかに自分らしく幸せに生きるために~」が開催されました。
今回の研究会は、「知らなかった事実を知り、とても考えさせられた」「時間が足りないくらいだった」「衝撃的なご講演だった」など、前回の開催時に参加者に大きなインパクトを与え大好評だった、ジョイセフ事務局次長・小野美智代さんのご講演第二弾です。
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はじめに、小野さん自身のバックグラウンドとして、旧家の長女で後継という立場からジェンダーの「?」を感じながら成長したこと、25歳の時にカンボジアの友人が23歳という若さで出産時に亡くなり非常にショックを受けたこと、女性の寿命が短い国は妊娠・出産で多く亡くなっていることなどから、「女だからという理由で悲しむ社会を変えたい」という思いを抱き、公益財団法人ジョイセフ(以下、ジョイセフ)に入職したことをお話しいただきました。
ジョイセフは、すべての人が自分の意思で生き方を選択できる世界をめざして、基本的人権であるSRHR【性と生殖に関する健康と権利】を推進する、日本生まれの国際協力NGOです。
ジョイセフの国際協力支援活動
ジョイセフは、世界の女性の現状の課題解決、なかでもセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利: 以下、SRHR)のための活動をしています。国際協力支援活動として、アジア・アフリカの途上国などで、住民たち自ら動く包括的な性教育・啓発、男性も含めて性教育ができる人材(保健ボランティア)の育成、裁縫技術の伝達など女性が収入を得られるトレーニング、妊婦検診・出産・予防・教育などの関係施設をコンパクトに集めた場をつくるなど、一時的な支援ではなく、実際的かつ持続的なサポートを行っていることをお話しいただきました。
日本におけるSRHRの現状と課題
東日本大震災以降、ジョイセフでは海外だけでなく、日本国内へも目を向け、支援するようになったそうです。日本は妊産婦、新生児ともに死亡率は世界でも最も低く、誇れるものですが、SRHRとしては、実は様々な課題があり、そして日々、それは変化しています。
ジェンダーギャップ指数は先進国で最下位
ジェンダーギャップ指数は、全体で日本は118位、G7では最下位。教育面、健康面ではそれほどではないが、政治面や経済面が大きな男女格差を生んでいる。
男性の生きづらさ
15〜29歳の男女に「泌尿器科や婦人科の悩みについて誰が相談相手か?」に対して、男性は、「相談する相手は誰もいない」が約4割、年齢とともに上昇しており、男性も生きづらさを抱えていること。
子宮頸がんの死亡率の増加
日本では、年間約2900人が死亡し、その多くが20-30代の女性であり、先進国で唯一子宮頸がんの死亡率が増加。また9000人が新たに罹患している。これは子宮頸がん検診の受診率の低さや、HPVワクチン接種の低さなどが要因とされている。
人工妊娠中絶の実態
令和3年度で全件数は12万0176件。そのうち10代は9093件に対して、40代で約1万3270件になり、実は40代の件数が多い。
海外と比較して選択の少ない中絶、避妊の実際
「中絶薬」は、2023年4月に承認された。ただ、薬の使用は入院必須で、手術と同様に高額な費用がかかる(今後、入院は必須でなくなる可能性も出てきた)。
「避妊具」は、日本は圧倒的にコンドームの使用だが、海外では避妊インプラント、避妊シール、避妊注射など、避妊の選択方法が様々あり、避妊の成功率も高い。
「緊急避妊薬」は、販売価格7,000円~9,000円で、2023年11月から145カ所の一定の条件を満たす薬局で試験販売が始まったが入手はなかなか困難(ネット検索可能)。
性教育の世界標準からの遅れ
国際スタンダードでは、「包括的性教育」は基本的人権として5歳からスタートし、性別(ジェンダー)で分けない教育を推進しているが、日本ではこうした教育は学校では行われておらず、避妊、性交、中絶は取り扱わないなど、学習指導要領の中で「歯止め規定」がある。
性的同意についての法改正
性加害の解決への一歩として、2023年7月に刑法が改正され、Yesといわない限り『不同意性交罪』となる。また「性交同意年齢」は13歳から16歳となり、16歳未満への行為は処罰されることになった。
多様な性についての知識の普及の遅れ、ハラスメント・暴露
当事者にとってLGBTQは性をカテゴライズしたもので差別的であるため、今は、性的指向と性自認のことを、SOGI(=Sexual Orientation & Gender Identity)と表現する。こうした知識も含め、多様な性についての知識がまだまだ普及していないため、知らないうちに相手を傷つけたり、また差別的な発言をしていたりする可能性がある。
小野さんから、バイアスは必ずあり、決してゼロにはならないことをまず認識することが大切。たとえば「普通」ということば。普通とはなんなのか、自分の普通は他の人にとって普通とはいえない。そこに思いこみや偏見はないのか。
小野さんご本人でさえ、日々の生活の中で、自分自身が持つバイアスに気づくことがあるそうです。今日から自分のバイアスと向き合ってほしい、そして、自分の心と体の健康について、自分で選択でき、「すべての人が自分らしく生きられる世界」を一緒に目指していただければと、熱くメッセージをいただきました。
最後に、ジョイセフフレンズ募集のお知らせ。登録をすると、年に数回、性教育についてアップデートされた情報を、小野さんからお届けいただけるとのことでした。
日々、SRHRの話題、問題はアップデートされている!
秋に行われる米国大統領選の争点の1つが「中絶」であること。米国では、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判決を2022年に最高裁が覆しました。こうした状況下で、共和党のトランプ候補者は「胎児を消耗品と見なしている」として中絶規制に賛成であり、民主党の大統領候補者となったハリス候補者は中絶規制の批判をしてきたことから、どちらが選ばれるかで中絶という女性の権利は変わっていく可能性があります。
また、小野さんが強調されたのはHPVワクチン接種について。27歳までの「キャッチアップ接種」の対象者(積極的なワクチン接種の広報を控えていた世代)と高校1年生(2008年度生まれ)の人は公費で受けられるのは今年度が最後(令和7年3月まで)。自治体から対象者に予診票が届いているはずですが、3回の接種完了のためには半年かかるため、今年9月末までに1回目の接種の勧奨を広報してほしいとのこと。
↓ 小野さんがワクチン対象者へのメッセージをわかりやすくまとめたもの
↓ 副反応などHPVワクチンの正しい情報としてご紹介いただいたYouTube番組です。
<HPVワクチン~失われた10年に何が起こっていたのか?~>
YouTuberのミュータントウェーブという女子サッカーの元代表でFtM(女性から性転換した男性)である三人のチームについて紹介いただきました。小野さんは、彼らと話すことで一人一人が違っていろんな人がいること、そして自分自身が今まで偏見、思い込みなどのバイアスがあったことを実感したそうです。
現在、彼らは全国の小中学校を回っていて、ジェンダー教育をしています。彼らと会うことで、小中学生たちは自分に様々な選択肢があることに気づき、差別・偏見について学び、変わっていくそうです。
↓ YouTuberでもあるミュータントウェーブ(写真右の三人)
小野さんのご講演後、ブレイクアウトルームで参加者同士が話し合う時間が設けられ、話し合った内容について、発表いただきました。
「企業では更衣室や健診などでジェンダーの配慮がまだできていない」
「HPVワクチンでは女性接種のみで男性へはまだで日本は遅れている」
「自分の人生を選ぶのは自分というメッセージを若い人や地域の人に伝えていきたい」
「ジェンダーについて衛生委員会などで発信をしていきたい」
「バイアスが自分自身を苦しめていたことに気づき、救いになった」
「健診を集団では受けたくないという対象者に以前より対応している企業もあるなど理解の程度が職場で差があることを知った」
「バイアスについてもう一度自分の中で見直しをしなくてはいけない」
「家族計画について病院任せだけでなく新生児訪問でも伝えたい」
「ワクチン接種は選択できる自由があっていいが正しい知識を持っているかを投げかけることが必要と感じた」
ご講演をきっかけに、感想はもちろん、自分ごととして現状や課題についてお話しいただいたのが印象的でした。
(株)ウェルネスライフサポート研究所代表の加倉井さおりさんは「前回に引き続き、今回も世界そして日本の現状など、視野の広がるお話を小野さんよりいただき、何ができるのかを考えるきっかけになりました。今日からご自分の住んでいる地域、そして家庭、職場の中でできることをワンアクションでもすることで世界は変わっていくのではと思っています」と語り、最後に、小野さんに感謝の拍手を送り終了となりました。
(レポート:Mika Masaki)
今回の講演を終えて
今回もセクシュアル・リプロダクティブヘルス&ライツの世界の現状から日本の現状まで、最新の話題を盛り込んで頂き、受講者の皆さんから
「知らないことが沢山あった」
「いかに自分にバイアスがあるかに気づいた」
などアンケートにも心震えた率直な感想が届きました。
誰もが、健やかに自分らしく幸せに生きることができる社会を創るためにはまず事実を知ることから。
今回、企業や行政の保健師だけでなく男女共同参画や人事部の方もご参加がありました。
皆さんの現場で、この学びをアクションに変えていっていただくことを期待します!
お忙しい中、第2弾のご登壇を頂いた小野さんに深く感謝します。
引き続き、女性の健康支援を学び、繋がり、実践するWOMANウェルネスライフ研究会を継続してまいります!
(加倉井 さおり)
次回は私が登壇します。
10年以上働く女性の健康支援をしてきた取り組みをご紹介しながらこれから未来を皆さんと共に考えていきます。
第13回 2025年2月8日(土)14時~16時
「働く女性の健康支援~これまでの取り組みと未来に向けて」
講師:(株)ウェルネスライフサポート研究所 代表取締役 加倉井さおり(保健師)
WOMANウェルネスライフ研究会の今後の活動予定、入会方法などについて詳細は、WOMANウェルネスライフ研究会ページをご覧ください。
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