WOMANウェルネスプロジェクトメンバーのhitomingです。私はIT企業の保健師として25年働いています。この間に女性を取り巻く労働環境も大きな変化を遂げています。
前回の投稿 『働く女性の健康支援で日々感じること 保健師としてのかかわりについて』では 現場で感じている事、現場での支援について述べさせていただきました。
今回は、自身が、2015年より働きながら東京慈恵会医科大学看護学専攻修士課程で、修士論文としてまとめた『20年以上仕事を継続してきた女性労働者の働き続ける力に関する研究』で、得た示唆を少しお話したいとおもいます。
20年以上仕事を継続してきた女性に関する研究
1985年『男女雇用機会均等法』制定後、20年以上正規雇用として職務継続してきた女性労働者の割合は26.8%(2015年)と低く、研究対象の働く女性は 貴重なロールモデルとなり、20年以上職務継続してきた働き続ける力を明らかにすることは、今後増加が予想される若年女性労働者への支援の示唆を得る事ができ、女性労働者にとって働きやすい 環境要因を強化できると思われます。
2016年4月に『女性活躍推進法』が10年間の時限立法として制定されて、5年経過し、世の中はどのようにかわったのでしょうか?女性達にとって少しは働きやすい環境が整ってきているのでしょうか?
私がデータを収集した期間は、2017年(平成29年)6月から10月です。職務継続20年以上の45~55歳の正規雇用、従業員数1000人以上の大企業で働く女性労働者20名に同意を得て半構成的面接を行いました。
内容は、「20年以上職務継続し、ライフイベントや就業上の困難を乗り越え、働き続ける力について」インタビューガイドを用いて、60分以内で語っていただき、ICレコーダーに録音し遂語録を作成しました。
研究により明らかとなった3つの側面
分析は遂語録から抽出した内容をコード化して、データが示す順序性と関係性を時間軸に照らし合わせて サブカテゴリ―とし、サブカテゴリ―の抽象度を上げてカテゴリーとし、それらの関係性を分析し、関連図を作成しました。質的研究全課程において研究指導教授によるスーパーバイズを定期的に受けました。
生データから22のサブカテゴリ―、6つのカテゴリーが抽出され、カテゴリ―から3つの側面が明らかになりました。
3つの側面とそれぞれに関するカテゴリー、サブカテゴリ―を紹介します。
『Ⅰ.継続する為に基盤となるもの』『Ⅱ.継続する為に必要な力』『Ⅲ.継続して見える景色』です。
Ⅰ.継続する為に基盤となるもの
『Ⅰ.継続する為に基盤となるもの』を支えるカテゴリーは、【仕事を継続するための覚悟】【仕事を継続できる環境が整っている】でした。
何があっても仕事を継続することは当たり前という認識、しなやかに柔軟に働く、仕事のやりがいや使命感が自分を支えているという認識が【仕事を継続するための覚悟】でした。
在宅制度、フレックス、職種変更等働きやすい制度が整っている。安心できる保育園や病時保育の支援、上司の配慮や支援、仲間の協力に支えられる。遠く離れた両親も巻き込み家族総動員の協力が【仕事を継続できる環境が整っている】を支えていました。
Ⅱ.継続する為に必要な力を支える
『 Ⅱ.継続する為に必要な力を支える』カテゴリ―は、【周囲に認められることが働く力になる】【仕事をしている自分が日々のモチベーションになる】【仕事と家庭の折り合いをうまくつけられる】でした。
組織の一員として会社に認められた。家族が働き続けた自分を認めてくれる。顧客の感謝の言葉に支えられる事が、【周囲に認められることが働く力になる】事を構成していました。
経済的な余裕がある幸福感。仕事を継続出来て、 自分が困難もを跳ね返す。仕事上の経験がつながっていく喜びが【仕事をしている自分が日々のモチベーションになる】を支えていました。
限られた時間のパフォーマンスを上げる。何があっても働きたい思いを家族に伝える。個々の状況により仕事、家庭の優先順を変えられるが 【仕事と家庭の折り合いを上手くつけられる】を構成していました。
Ⅲ.継続して見える景色を支える
『Ⅲ.継続して見える景色を支える』カテゴリーは【仕事を継続して見える景色や喜びはある】でした。
積上がったスキルが誇りになる。困難を乗り越えられる力を蓄えられる。制度に頼らず自立する気持ちを持ち続ける。次のステップになる手段になる。失敗が自分の強みになることに気づくことが、【仕事を継続して見える景色や喜びがある】ことを構成していました。
研究を通して得られた結論
結論は20年以上職務継続してきた女性労働者の働き続ける力は、【本人の仕事を継続するための覚悟】と【職務継続できる環境が整っている】ことが基盤になり、【家庭との折り合いを上手くつけられる】【周囲に認められることが働く力になる】【仕事をしている自分が日々のモチベーションになる】となって働き続ける力を推進していました。
<積上がったスキルが誇りになる><失敗が自分の強みになることに気づく><次のステップに進む手段や準備になる>は、20年以上の職務継続をしてこそ【仕事を続けて見える景色や喜びがあると】結論づけられました。
20人の20年以上職務継続してきた女性労働者の声に耳を傾ける事は、働き続ける女性自身、それを支える私たちにくれた大きなエールとして 受け止めたいと思っています。
保健師 hitoming(スタッフ紹介ページはこちら)
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